四谷大塚、早稲田アカデミー、サピックスの入試問題分析
前回の「【比較】四谷大塚、早稲田アカデミー、サピックスの入試報告会(中編)」 の続きになります。
サピックス
さて、最後はサピックスです。
サピックスの塾の説明を少し聞いたときは、少し揺らいだのを覚えています。
やはり、
「サピックスには合格できるメソッドがあります」
といった宣伝文句がありました(昔?)が、プリントを中心とした教材は、入試問題の傾向に柔軟に対応できており、それ故の圧倒的な合格者数なのかなぁと思いました。
前置きはこれくらいにして、説明内容は科目別に説明構成が異なりますので、科目別に見ていきます。
算数
算数は、
(1)総括
(2)全体的な出題傾向
(3)主要校の動向(開成、麻布、筑駒、栄光、駒場東邦、桜蔭、女子学院、雙葉、フェリス、慶応中等部)
(4)最後に
(5)注目問題21校分
となっていました。全体的な傾向をみながら、各学校の注目問題を取り上げ、特徴的な傾向を説明する感じで進んでいきました。説明されたのは、以下のような内容でした。
- 問題文の長文化
- 立体の切断や投影図の出題が増加
- 図を普段から書き慣れていないと解けない
- 定量問題にひねり
- 複数条件を整理して見当をつけて調べる
- 作業を分析した結果を利用し、自分で考える力が必要
なお、注目問題に対し、的中問題や類似問題は4題(桜蔭、海城、武蔵、渋幕)で、他塾では特に記載がなかったので、的中しているのは心動かされます。
国語
国語の資料は、
(1)総括
(2)難関校の出題傾向 (開成、麻布、武蔵、桜蔭、女子学院、雙葉、筑駒)
(3)今後の対策
(4)注目問題20校分
となっていましたが、説明は、
・文章の特徴
・問題の特徴、傾向
・全体の印象
・対策
ですすめられました。
文章の特徴
説明文では、昨年は「テクノロジーと人」というテーマが多く、今年は「生身の人間の力」、「コミュニケーション」、「真の学び」などがテーマとなっていました。
物語文では、元号の変わり目出会ったことを受けた「新時代に向けて前を向いて」、「生きる喜び」や「後味の悪い話」、「いじめなど救いがない内容」が出題されたとのことでした。
物語文のテーマとしては、教育的観点から最後はプラスに終わるものが一般的と考えていたので、意外でした。
問題の特徴や傾向
外来語、漢語、和語といった大人の社会で当たり前に使われている言葉について出題されているとの分析がありました。これは、早稲田アカデミーでも同じような分析がされていました。
例として、「ヤバイ」の意味は、「危険」と「イケてる」の2つの意味があり、活きた日本語を正しく理解できているか?とか、「鼓動」、「動悸」、「ときめき」の使い分けだったり、「life」と「生活」、「真実」と「事実」、「観光」と「滞在」の違いを説明できるかとか、知らない言葉に関心をもち、調べたりして自分のモノにするようにとの話がありました。
全体の印象
ここについては、あまり特筆すべき説明はありませんでした。
対策
「語彙力+読解力」を6年の夏までにベースの力をつけ、「トレンド」として、世の中で何が起きているかを知るのを夏以降に志望校対策として実施するのがよいが、サピックスでは、最新にUpdateした教材のため、両方並行して対応が可能ですとの説明がありました。
上記以外で、資料に頻出著者、作品の一覧や文章と抜粋問題の的中が12校分掲載されており、サピックスの力を見せつけられました。(一部、学校別サピックスオープン慶応中等部の問題が、早稲田中学に出題!というのもありましたが。。。)
理科
理科ですが、
(1)分野別出題率
(2)物理分野
(3)化学分野
(4)生物分野
(5)地学分野
(6)次年度以降に向けての対策
(7)注目問題15校分(的中問題は3問)
となっていました。
分野別出題率
物理分野の出題の減少傾向が続き、生物と化学が3割弱を占めており、また、地学の割合が上昇し、物理より多くなっていることが掲載されています。とはいえ、志望校の過去問にて、それぞれの学校別に判断すべきことかと思います。
物理分野
力学単元の出題では、昨年多く出題された「浮力」が大幅に減少し、一昨年大幅に減少した「物体の運動」がやや増加したことをうけ、出題の偏りが周年現象の影響を受けることが多いことが記載されています。あとは、原理を活用できるだけの解法力や生活と関連する題材について、言及がありました。
化学分野
「定性分析」の知識の完成度が成否を分ける題材となっていたことが特徴として挙げられていました。また、
- 知識の先を狙う問題
- 生活に関連した題材
- 初見のグラフを活用して解く問題
- 科目横断的記述が出題
が記載されていました。
生物分野
昆虫関連の問題は、相当多かったことが挙げられており、「つくり・分類」に関連した問題が増加し、知識の範囲を超える問題が散見されたと記載されていました。また、テーマとしては、「外来種・在来種・絶滅危惧種や生物濃縮」が挙げられ、他の分野でも同じく、分野横断型の出題の増加を特徴として説明していました。
地学分野
天体、惑星、台風に関する出題が増加傾向にあること、また、特に地学分野の出題の偏りは時事的な影響を受けやすいと記載がありました。特に新しいタイプの難問として、駒場東邦の台風の問題を挙げており、場合によっては、「捨て問かもしれない」とのコメントもありました。
次年度以降に向けての対策
今年の特徴として、
- 科目横断的、分野横断的な出題の増加
- 初見、その場での柔軟な対応力
- 学習指導要領の変更
- 求められている知識のレベルアップ
- 生活に関連した題材からの出題の増加
- 自由度の高い記述や作図が出題
と説明があり、また、早稲田アカデミーでも話のあった「昆虫展」についても触れていました。
全体的に今までの学習内容は高いレベルで完成していることが前提で、難度のインフレーションが起きており、そのインフレが選抜効果を失っているものもみられると記載されています。
更には、それらに対応するには、
「時代に即して更新されるサピックスの教材を用いた学習に一日の長がある」
と締めくくられていました。
個人的には、これらを踏まえ、特に生活に関連した題材からの出題 に関しては、
「麻布の理科でやっておきたいこと!(後編)」
で紹介させて頂いた内容は、他の学校にも有効かと思います。
社会
最後に社会です。
(1)総括
(2)分野別の出題内容
(3)主要校の出題(開成、麻布、武蔵、駒場東邦、筑駒、桜蔭、女子学院、雙葉)
(4)来年度に向けて
(5)注目問題23校分(的中、類似問題は4題)
総括
総括では、大きな変化はないとした上で、特徴として、
・幅の広がり
・多様性
・未来志向
を挙げていました。
分野別の出題内容
地理分野では、受験生の理解度をはかる問題の深化を特徴として、出題の多様化と知識の活用力が試されていると記載されていました。
例として挙がっていたのは、
「耕地面積に占める田の割合が低い茨城県・長崎県について県毎の理由の違い」(市川中)
「江戸時代、江戸で冬から春に大火が多かった理由」(桜蔭中)
です。
歴史分野では、やはり新天皇即位を控え、元号をテーマとした出題や「昭和」、「平成」の時代を振り返る出題が多く、また、単純な用語の暗記では対応できない問題(「16世紀に日本に伝わった西洋音楽が残らなかった理由」(渋々)など)が多かったとの記載がありました。
公民分野については、時事的要素の影響を大きく受ける分野としながらも、前年より偏りが少なく、多様性に富んだ出題(「野党の役割とは何か」(渋幕)、「税の公平性に関する2つの見方」(浅野中)など)であったとの説明でした。
社会も理科と同じく、他科目との融合問題の出題がみられたことや「18才で何ができるか?」、「民法から遺産相続額を求めさせる」、「アメリカとカナダの国境問題」などをピックアップしていました。ちなみに注目問題では、女子学院の問題が2問も挙げられ、それぞれ分析力や知識の活用力の重要性が記載されていました。
四谷大塚 校舎別合格報告会
ご覧になってわかる通り、自塾の四谷大塚の記載内容が薄いです。これは四谷大塚の入試報告会はママに出席してもらい、その内容を聞き、真新しいことだけを記載しようと思いましたが、過去に何回か参加しているため、新鮮さが薄れてしまったのかもしれません。すみません。。。
ただ、校舎別の合格報告会に行って説明を聞いています。
(すみません、他の校舎で実施されているかどうかは不明です)
こちらは、校舎の合格者数やクラス別合格者などが整理された資料をもとに併願校の組み方などの説明がありました。
また、科目別に実際に息っ子を教えている先生方がそれぞれの科目について、校舎で受験者が多い学校を中心にお話ししてくれました。
こちらは、より具体的に何をいつまでに習得するかを説明してくださるので、非常に役に立つ情報が多かったです。説明会後は、自分の子供に不足していることについて、どのように補っていくかを質問し、それぞれにあったアドバイスをもらえるので、怒りん坊パパ的には四谷大塚の報告会は校舎別を重視していました。
最後に
さて、四谷大塚、早稲田アカデミー、サピックスと長々と書いてきましたが、いかがでしたでしょうか?
四谷大塚は、中堅校までを対象範囲とした分析をしており、サピックスは難関校寄りの分析、早稲田アカデミーは2塾のエリアをカバーした分析になっています。
各塾ともに必要な知識や思考力など、説明をして頂き、「なるほど」と思うところも多いのですが、じゃあ、何が役に立つのかといった点で考えると、
- 志望校、併願校の人気や倍率の状況を確認し、改めて必要な学力(偏差値)を見定める。
- 志望校、併願校の学校の出題内容や傾向を知り、家庭の会話等で補えるものを見つけ、実践する。
といった感じでしょうか?
もちろん、これからどの塾にするかを決めるご家庭にとっては、塾選びの方針を見極める手助けになると思います。
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